夜の風は冷たかった。
ので、無くした帽子を買った。
やっと冷静に慣れたのは、家に辿り着いてからだった。
君や彼女や俺の夜は
少しずつ隣り合わせで、スルリとすれ違ったらしい。
あまりにあっけなくて、空を仰いでしまった。
君や彼女や俺の夜は
それぞれに重く、簡単には入り込めない。
俺が何も捨てられないのと同じで、
君にも大切なものがありすぎるのだろう。
そりゃそうだ。
僕たちは「いい大人」なのだから。
明日の風は、きっと今日とは違うね。
どっちに転ぶかは、誰にもわからない。
あがこうか、あがくまいか。
歌うたいのくせに、ぐうの音もでないのか。